スキルギャップを埋めるためにベトナムが求められる取り組み

ベトナムの労働市場に関する最近の短期調査報告によると、既存および、新規立ち上げ企業からの人材の需要が高まる中、企業は優れた人材の発掘という課題に直面しています。この調査報告は、スイス拠点の人材ソリューション企業の子会社、アデコベトナムによって行われたものです。

その報告では、2017年の上半期、特に技術職と経理職に関して、企業による人材需要と、就労可能な労働者の間にミスマッチが生じていたとされています。

アデコベトナムのレ・グェン・ゴック・タイン人材事業部長は、「企業サイドは人材を求めていますが、スキルを伴った求職者が不足しているため、需要と供給のミスマッチが生じています」と、述べています。

また、「スキルアップが必要な新卒者だけでなく、労働者の51%が、経験を積んだ求職者ですら最新の知識や職務の遂行に必要な実践技術を持ち合わせていないと考えています。スキルに関する問題を解決することが、仕事に対する高い満足度に繋がり、企業の生産性・成長が促進されるはずです。」とも話しています。

報告によると、若い世代の大卒者失業率は17%と高く、大学のカリキュラムが非実用的な理論を重視し過ぎていて、実用的なスキルや知識の教授ができていないと、批判の対象になっているとのことです。

ベトナム人は物覚えが良いとされていますが、問題解決・コミュニケーション・リーダーシップといったソフトスキルは不足していて、企業サイドの研修が必要な分野の一つです。

スキルギャップの広がりに関してベトナムが抱えている問題は、人材競争力に関する国際調査 2017にも反映されています。この調査でベトナムの職業技能ランキングは、2016年95位から2017年の98位に落ちてしまいました。

現在ベトナムが必要としているのは、仕事のあり方を根本から変えるであろうテクノロジーの新たな波に備えることだと、専門家は話します。

国際労働機関の調査では、ベトナムの繊維・衣類・製靴労働者の85%がオートメーションやロボットに取って代わられる可能性があるとしています。非肉体労働者も完全にその危険から免れられるとは言えません。

ベトナムの起業家精神は強いとされていますが、教育システムと未来の経済に求められるもののギャップを埋める必要があるとアデコはしています。

ドイツやスイスなどの、人材競争力に関する国際調査の職業技術や人材準備の面で上位に付けている国を見てみると、注目すべき傾向が目にとまります。それらの国には、経済的ニーズに合わせた計画的な職業・見習いトレーニングプログラムが備わっているのです。

例えば、ドイツでは高校を卒業した学生は、直接大学に行くか、企業の職業訓練に申し込むかを選ぶことができます。学生のほとんどは大学に行く前に一定期間以上のOJTを受けるため、職業訓練を選びます。こういったプログラムにより、アカデミックなトレーニングを行う前に学生たちは実践的な知識を身につけ、ソフトスキルを磨くのです。

アデコ・ベトナムのゼネラルマネージャーのアンドレ・マングルズ氏は次のように述べています。「現在、ベトナムで、一般教育および職業訓練機関と提携している企業は、20%にも満たない状況です。提携の内容は、主に短期雇用需要に重点を置いています。スキルギャップを埋めるにはまだまだ努力をが必要です。雇用需要に合わせてカリキュラムや訓練プログラムを改善し、未来の労働者のとなるべく、確実に仕事に関連するスキルが教えられるようにするためにも、企業の教育機関との連携が奨励されるべきです。」

ベトナムの現在の経済的可能性や、増大しつつある労働力に伴い、その可能性を現実化させるためにも、スキルギャップと若年層の失業率に関する問題の対処は必須です。

そのためには、政府と企業、教育機関で協力し、継続して取り組んでいく事が求められます。